「免疫療法」について知ろう
「免疫療法」とはどのようなものか、みなさんご存知ですか?
今回は、東北大学病院 腫瘍内科 (東北大学病院がん相談室長)城田英和准教授より免疫療法について解説します。
まずは国立がん研究センターがん対策情報センターが運営する「がん情報サービス」では「免疫療法」について以下の記載があります。
- 私たちの体は免疫によって発生したがん細胞を排除しています
私たちの体は免疫(めんえき)によって発生したがん細胞を排除しています。
しかし、免疫が弱かったり、がん細胞が免疫にブレーキをかけたりすることにより、私たちの体ががん細胞を異物として排除しきれないことがあります。 - 免疫療法は、免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法です
- 効果が明らかな免疫療法は限られています
- 自由診療で行われる免疫療法(広義)では慎重な確認が必要です
- 免疫療法(効果あり)にもリスクがあります
詳しい内容は、こちらをご覧ください。
■免疫療法 まず、知っておきたいこと
リンク:http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu01.html
(参考:国立がん研究センターがん情報サービス)
近年、免疫療法の一つである抗PD-1抗体、ニボルマブが登場しがん免疫療法が非常に脚光をあびています。他にも類似の抗体薬や抗CTLA4抗体、イピリブマブといった薬剤は免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれます。従来の抗がん剤とは違った仕組みで有効性が示され、自己の免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃、排除することによって治療効果が示されます。
今までに免疫療法は、がんワクチン、養子療法等が試みられてきましたが、多くの臨床試験にも関わらず、がんに対する有効性は示されませんでした。つまり免疫チェックポイント阻害剤は、初めて治療効果を示すことが証明され、承認を受けた免疫療法の薬剤なのです。
ですから、ここでがんに対する有効性が示されている狭義の免疫療法と自由診療で行われている免疫療法も含む広義の免疫療法の2つの意味があると思います。
がんと免疫の関係について
まずは、がんと免疫の関係について説明します。がん患者さんの免疫細胞は、元気がなくなっていると思っていませんか?実はがん患者さんの生体において、免疫細胞は非常に活性化された状態にあるのです。がんの周辺には、多くの免疫細胞が存在し、大きく2つの役割があります。
一つは、がんを攻撃しがん除去する細胞、もう一つはこれらの攻撃をブロックし、がんの増殖、転移を手助けしている細胞です。攻撃する細胞が強ければ生まれてきたがん細胞は早期に消失しますが、がん患者さんの生体内では、攻撃をブロックする細胞の抑制性の免疫細胞が非常に活性化された状態にあります。
免疫チェックポイント分子というのは、攻撃をブロックする細胞の抑制性の分子でがん細胞を攻撃するT細胞にブレーキをかけがん細胞を守っている分子です。この分子をブロックすることにより本来抑制されていたT細胞が活性化しがん細胞を除去することが可能になるのです。
免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブは平成29年10月時点では、悪性黒色腫、肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、胃がんに治療効果が証明され適応があります。しかしながら現在、多くのがん種でこの薬剤を試す臨床試験が行われており、今後様々ながん種で適応されることが予想されます。
東北大学病院では多くのがん種に対し免疫療法の治験が行われておりますし、興味があれば受診中の病院の主治医や該当の診療科に聞いてみてください。
承認されて間もない薬剤ですが、患者さんの中には非常によく効いて従来の抗がん剤では考えられないほどの長期間コントロール可能な症例も経験しております。しかしながら、治療効果としては残念ながら全ての患者に効果を示すものではなく、その効果は、だいたい2-4割と言われております。現在、どのような患者さんに効くのか、効かないのかを治療前にグループ分けする研究が盛んに行われており、今後はあらかじめ治療効果が予想される患者さんのみへの投与する、個別化医療が進んでいくと予想されます。
副作用はあるの?
副作用に関しても注意が必要です。ニボルマブは比較的副作用が少なく、従来の抗がん剤に比べ使いやすい印象がありますが、今までの薬剤とは全く別の仕組みで治療効果を示すために、わたしたち腫瘍内科専門医は今まで経験したことのない副作用、その治療を行うことになっています。多くの場合、他科との連携が重要です。ですから、この治療を行う場合、経験豊富で他科にも多くの専門医がいる、がん診療連携拠点病院で行うことをお勧めします。
免疫療法は、自由診療?どこで受けることができるの?
自由診療による免疫療法はお勧めできません。過去にも、わたしたちは同様のがんワクチン、養子療法等の免疫療法を基礎、臨床と様々な角度から研究を行ってきました。しかしながら有効性、安全性は確認できませんでした。
また、いくら免疫チェックポイント阻害剤でも、適応承認を得ていないがん種に対し自由診療での投与もお勧めできません。上記のように副作用の中には重篤な症状を呈する場合があり、設備が整った施設でないと対応が難しいことがあるからです。
免疫療法と言っても、一概には言えませんので、まずは主治医に聞いて疑問があれば時にはセカンドオピニオンを求めてみるのがいいかと思います。
※宮城県内のがん診療連携拠点病院については、「がん情報みやぎ」をご覧ください。
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